木はり絵の開発と製造にまつわるお話

【開発編】

きのわのモノづくり

こだわりのポイント

木はり絵の開発は、図案開発が大部分を占めます。完成したときの作品の見栄えと、手づくりする工程の手応えのバランスを考えなければなりません。

カットして貼り重ねて、を細かく多くすると作品の見栄えはよくなりますが、作業は大変になります。いくら画用紙のように扱える木のシートといっても、やはり細かい作業になると紙と同じようにとはいきません。

そこで、木はり絵では細かい描写は印刷も併用しながら表現しますが、印刷部分が多くなるとのっぺりとして立体感に欠けてしまいます。逆に印刷部分を少なくしてカットや貼り付けといった手づくり部分を増やすと、作業の大変さが先行してしまいつくる楽しさが感じられない、ということになりかねません。

完成したときの立体感と木製の風合い、つくるときの難易度や達成感などのちょうどいいバランスを見つけ出すことがキーポイントとなります。

 

題材の選定

絵柄の題材は様々ですが、大きく分けて「イラスト」と「写真などからのトレース」の2つがあります。

イラストからの開発では、開発者の個性がよく現れます。イラスト作成はきのわスタッフ(男性)が担当することが多いのですが、木はり絵ユーザーには女性が多いため、きのわスタッフ(女性)の意見が大きく反映されます。鶴のひと声というのでしょうか。たまに、外部の女性イラストレーターにお願いすることもあります。

写真からのトレースでは、素材集めが決め手となります。風景や建物は、少し角度が変わると全然雰囲気が変わってくるからです。また、トレースをしていくと、いくら画像を拡大しても判別できないくらい細かな部分に頭を悩ませることがあります。実際はそれくらい細かいと、キットにしたときにはほぼ見えないくらい小さな部分です。でも大きな意味もなく小さな部分にこだわって一日が終わる。そんな開発も楽しいものです。

イラストでもトレースでも大事なことは、パーツの切り分けと貼り重ねる順番の設計です。貼り重ねたときに下の層にくるパーツほど大きくなりがちですが、一つのパーツをあまり大きくしてしまうと、貼りにくかったり、その層は一つの樹種しか使えなかったりという問題がでてきます。より立体感が出るように、また、違う樹種を組み合わせてお客さまにたくさんの木に触れていただけるように、考えながら設計しています。

 

オリジナル商品の開発について

オリジナル商品の開発は可能ですか?といろいろな業種の企業様だけでなく個人のお客様からも質問されることが頻繁にあります。

結論から言うと「可能」です。しかし、題材により木はり絵に向いているものとそうでないものがあります。パーツを切り分けて重ねていく方法なので、例えば水彩画のように境界がはっきりしないイラストや、のっぺりと平面的なイラスト、逆に描写が細かすぎるイラストなどは向きません。油絵で例えれば、ゴッホは可能でモネは難しい、というところでしょうか。

開発費は別途いただきますが、オリジナルも製作可能ですので、興味のある方にはお見積もりいたします。

 

きのわのモノづくり

 

【製造編】

きのわのモノづくり

突板について

木はり絵のメインとなる材料は「突板(つきいた)」と呼ばれ、シート上に薄くスライスされた天然木です。日本国内の様々な地域で伐採された木材を、特殊な機械で薄くスライスします。木はり絵で使用している突板の厚みは0.3mm、画用紙くらいの薄さです。

木材は、伐採されたら乾燥などさせず新鮮なうちにスライスされます。まるで木のお刺身ですね。スライスされた木は薄いために、そのままにしておくとすぐに割れてしまうので、木はり絵で使う突板は裏側に和紙を貼って補強します。こうして、ハサミやカッターで細工しても割れたり裂けたりしない、工作に向いた材料が出来上がるのです。

突板は、古くから家具の表面材や内装材に使われてきました。反りや変形の少ない合板の上に突板を貼ると無垢材に見えることから、コストを抑え、経年変化の少ない材料として重宝されたのです。しかし近年の日本では、伝統産業の衰退などから、これらの木製品や素材を生産する工場がどんどん少なくなってきました。

きのわの地元会津でも、以前は、山師(山林の買付けや伐採を請け負う人)、木地師(ろくろを回して椀や盆などの木工品を製作する職人)、塗師(器の木地に漆を塗る職人)など、木工関係の仕事に従事する人々が多かったのですが、今は本当に少なくなりました。きのわで使う突板は、残念ながら福島県内ではなく、県外の一大産地から仕入れていますが、この先どうなるのでしょうか?

きのわの周辺にはたくさんの自然林があります(クマもよく出ます)。戊辰戦争などの歴史的背景から、これらはほとんどが国有林です。メンテナンスは少しずつされているようですが、林業の働き手が少ないため十分とは言えないのが現状です。きのわでは、少しばかりですが、木はり絵から得た収益の一部を森林保全活動へ寄付しております。きのわが使う材料のボリュームは本当に少ないので、大した消費の貢献にはなりませんが、国産材とそれに関連する産業が元気になることを祈っております。

きのわの木はり絵手づくりキットでは、デザインによっては背景に色紙を使っているものもありますが、基本的には突板を材料としています。これらの材料や説明書、完成イメージをパッケージに入れて…キットを楽しんでいただけるお客さまを想像しながら日々生産しています。

 

より多くのお客さまへ向けて

きのわでは、会社を立ち上げた当初から、日本だけでなく海外のお客さまにも楽しんでいただくことを想定して製品づくりをしてきました。そのため、パッケージや説明書には、日本語・英語・中国語(繁体字)の3か国語を併記しています。説明書は図解がほとんどですので、それら3か国語以外の国でもわかっていただけるでしょう。たぶん。

また、デザインは気に入ったけれど手づくりするのはハードルが高い、というお客さまもいらっしゃいます。そういった方々へ向けては、木はり絵手づくりキット以外にストラップやゲームなどの商品も取り扱っています。今のところこれらの雑貨は少ない空き時間で生産していることもあって取扱数量が少なく、きのわオンラインショップを始めとする限られた販売チャネルのみでご購入いただける商品です。